MCP対応SaaSが切り拓く“次のSaaS活用”──AIエージェント時代に企業ITが向き合う3つの問い

2026/05/07

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この記事の要点(先に結論)

  • MCP(Model Context Protocol)に対応するSaaSが、2025〜2026年にかけて増加傾向にあります。
  • これは単なる技術トレンドではなく、SaaSの選定基準・情シスの役割・ガバナンスの考え方を大きく変える可能性を秘めた動きです。
  • 海外ではOpenAI・Google・MicrosoftといったAI主要プレイヤーがMCPを一部・限定的にサポートし始め、SaaS側もSquare・AsanaなどがMCP対応を進めています。
  • 国内でもfreeeを筆頭に順次発表されていますが、全体としてはまだ黎明期の段階です。
  • これからの企業ITが向き合うべきは、
  • 「① SaaSをどう選び直すか」
  • 「② 情シスの役割をどう再定義するか」
  • 「③ AIが業務に入る時代のガバナンスをどう作るか」
  • という3つの問いです。
  • 「Read Only(読み取り)のような小さなスコープから試して、運用を重ねながらルールを育てる」ことが、現実的なアプローチと考えられます。

1. そもそもMCPとは何か?

MCP(Model Context Protocol)は、Anthropicが2024年末に策定・公開した、AIエージェントが外部のツールやサービスと連携するためのオープンな標準プロトコルです。

ひとことで言えば、「AIエージェントがツールやAPIにアクセスするための共通インターフェース」です。

MCPサーバーを公開したサービスは、AIチャットツールから自然言語の指示で操作できるようになります。

これまで、AIに自社のSaaSデータを扱わせようとするには、サービスごとに個別に連携を作る必要がありました。

MCPによって、対応サービスであればAIチャットから自然言語で扱えるようになり、連携の設計と実装のトータルコストを一定程度、下げる可能性が出てきました。

2. なぜ今、MCP対応SaaSが増えつつあるのか

2-1. 主要AIプレイヤーがMCPをサポートし始めている

普及のきっかけは、主要AIプラットフォームがMCPを一部・限定的にサポートし始めたことです。

  • OpenAI:ChatGPTおよびAgents SDKでMCPをサポート(2025年以降に段階的に導入)
  • Google:GeminiでMCPを限定的に実装・試験運用(一部ユーザー・サービスに限定)
  • Microsoft:Copilot Studio、GitHub CopilotでMCPを一部機能として取り込み検討中

まだ全ユーザーが標準的に使える段階ではありませんが、「業界標準候補」として注目されている段階です。

2-2. SaaSの「自然言語インターフェース」化

これまでのSaaSは人がブラウザを操作することを前提としていましたが、MCPはその前提を一部崩し始めています。

  • AI側:Claude、Gemini、CopilotなどがMCPをサポートし始めている
  • SaaS側:MCPサーバーを公開すれば、AIエージェントから自然言語で扱えるサービスとして位置づけられる
  • 企業側:「AIから使える業務SaaS」を求めるユーザーが増えつつある

2-3. SaaSビジネスモデルにも影響の兆し

AIエージェントが管理画面を経由せずに業務を完結させる可能性が高まると、「機能とデータをどれだけスムーズにエージェントに提供できるか」が新たな価値軸となります。

一部では「シート課金」から「API利用量に応じた従量課金」への移行検討も始まっています。

3. 海外と日本のMCP対応動向

3-1. 海外SaaSの動向

  • 決済・小売:Square(決済・在庫管理APIの一部対応)
  • プロジェクト管理:Asana(Work GraphをMCP経由で公開)
  • ID管理(IDaaS):Okta、Microsoft Entra ID(MCPサーバーを一部公開)
  • 開発支援:GitHub MCPサーバー(プレビュー段階)

特にIDaaS分野は、全SaaSを横断的に把握できる「ハブ」として、今後の効果が期待される領域です。

3-2. 日本SaaSの動向

国内の調査(2026年4月時点)によると、日本のSaaS 100社のうち、約35%が何らかの形でMCP経由での連携が可能とされています。

出典:日本のSaaS 100社のMCP対応状況を調査した — AIエージェントから見た現実

 

4. 企業ITが向き合うべき3つの問い

問い① SaaSをどう選び直すか

従来の「機能・価格・セキュリティ」に加え、以下の新しい評価軸が重要になります。

  • MCP対応の有無と対応スコープ(読み取り/書き込み)
  • 認可の粒度(権限を細かく制御できるか)
  • 具体的なロードマップの有無

問い② 情シスの役割をどう再定義するか

「定型的な確認・棚卸し・レポート作成」の一部が自動化されることで、情シスの役割は以下のようにシフトします。

  • 設計者:AIエージェントに任せる業務を設計する
  • 監督者:AIが扱うデータの範囲・権限を継続的に統制する
  • 教育者:現場が安全にAIを使えるルールを作り、浸透させる

問い③ AIが業務に入る時代のガバナンスをどう作るか

AIエージェント特有の論点(操作ログの記録、責任の所在、エージェントへのID割り当て等)を整理しておく必要があります。「AI経由のアクセスは人間のアクセスとは別物」という基本方針の策定が急務です。

5. SaaSベンダーの典型的な対応パターン

  1. Read Onlyからの段階的提供:誤操作リスクを抑えるため、まずは情報取得から開始。
  2. Human-in-the-Loop:書き込み時は人間が承認するステップを挟むハイブリッド型。
  3. スコープ設計の粒度:OAuth 2.1ベースで必要最小限の権限のみをAIに渡す設計。

6. これからMCPと向き合う企業がやるべき準備

  • 現状把握:自社SaaSのMCP対応状況を洗い出す
  • ユースケース整理:AIに任せる定型業務の候補をリストアップする
  • ガバナンスルールの初期設計:ドラフト作成
  • 接続管理・ログ方針:管理体制の検討

7. よくある質問(FAQ)

Q1. MCP対応SaaSは、結局どんな業務に向いているのですか?
「定型的な確認業務」「横断的な集計」「定期的なレポート作成」に最適です。
Q2. MCPと従来のAPI連携・iPaaSは何が違うのですか?
MCPは、LLMが自然言語の指示に基づいて適切なツールを「動的に選んで呼び出す」ことを前提としたプロトコルです。
Q3. なぜ“読み取り専用”から始めるのですか?
セキュリティリスクを最小化し、安全性を段階的に検証するためです。

8. まとめ

MCPはSaaS活用のあり方を再定義する変化の芽です。

完璧な答えを待つのではなく、「Read Onlyのような小さなスコープから試し、運用しながらルールを育てる」スタンスで、まずは自社SaaSの棚卸しから始めてみてください。


出典元(一次ソース):
Anthropic - Model Context Protocol (MCP): https://modelcontextprotocol.io/
freee株式会社 プレスリリース: https://corp.freee.co.jp/news/

※本記事は2026年5月時点の情報をもとに作成しています。