Skype廃止に伴うTeams移行 —気になるセキュリティや移行方法、注意点とは
これまでMicrosoftが無料で提供してきたオンラインチャット・通話ツールの「Skype」が2025年5月5日をもってサービス終了を迎えました。これにともない、「Microsoft Teams(以下Teams)」への移行を検討する企業が増えています。しかし、Teamsを含むコラボレーションツールは便利な半面、適切に設定しなければ、情報漏えいや不正アクセスなどのリスクを招く恐れがあります。
そのため、「Teamsのセキュリティは大丈夫なのか」と不安を感じている方も多いのではないでしょうか。
この記事では、SkypeからMicrosoft Teamsへの移行を控えたシステム担当者向けに、Teamsのセキュリティ機能や移行方法、注意点などを解説します。
■Skypeが2025年5月に廃止、Teamsへの移行を推奨
Microsoft社は、2025年5月5日にSkypeのサービスを完全に終了することを正式に発表しました。現在は、無料・有料を問わず、すべてのSkypeユーザーに対してTeamsへの移行が推奨されています。
チャットや連絡先など、Skypeのデータの多くは、Teamsに引き継ぐことができます。ただし、1対1のチャットなど、一部のデータは引き継げないため注意が必要です。
◇Skypeの有料機能の取り扱い
Skypeのサービス終了にともない、新規ユーザー向けの有料機能の提供はすでに停止しています。これにより、新規ユーザーはSkypeクレジットの購入や新たなサブスクリプション契約はできず、国際通話や国内通話も利用できません。
◇Skypeクレジットとサブスクリプションの扱い
すでに購入済みのSkypeクレジットは、引き続き通話に利用できます。ただし、自動チャージサービスは、2025年4月3日以降利用できなくなっています。
また、サブスクリプションは、2025年4月3日まで自動更新され、それ以降も契約中の有効期限までは利用可能です。
◇Teamsが提供する代替機能
無料版「Teams Free」でも、Skypeと同様に、1対1の通話やグループ通話、チャット、ファイル共有などの基本機能が利用可能です。さらに、会議の主催やカレンダーの管理、コミュニティの作成や参加といった拡張機能も無料で利用できます。
なお、有料版との違いや、無料版における各種機能の制限については、のちほど詳しく解説します。
■Microsoft Teamsのセキュリティ機能
Teamsには、情報漏えいや改ざんなどからデータを保護するための、多彩なセキュリティ機能が備わっています。ここでは、Teamsの代表的なセキュリティ機能について紹介します。
◇データ暗号化とプライバシー保護
チャットや通話、ファイル共有など、Teams上で行なわれるすべての通信データは、TLSやSRTPによって暗号化されており、外部の不正アクセスから保護されています。
◇アクセスコントロールと権限管理
Teamsでは、条件付きアクセスポリシーの設定により、ユーザーの所在地やIPアドレスなどの条件に基づいて、アクセスを制限できます。企業や組織でTeamsを利用する場合は、情報漏洩防止の観点からアクセスコントロールの設定は重要です。
◇チームとチャネルのプライバシー設定
Teamsでは、グループ単位である「チーム」や、そのなかで話題ごとに分かれる「チャネル」に対して、細かいプライバシー設定が可能です。
チームは「パブリック」または「プライベート」、チャネルは「標準」「プライベート」「共有」の3種類から選択できます。
プライベートチャネルを利用すれば、チーム内の限られたメンバーだけがアクセスできる専用のチャットルームを作成できます。機密性の高いプロジェクトでも、新たにチームを作成することなく、安全なやり取りが可能です。
◇ゲストアクセスの制限と管理
Teamsには、外部ユーザーをゲストとしてチームに招待できる機能があります。ゲストユーザーは利用できる機能に一部制限があるため、情報共有や共同作業は必要な範囲に限られます。これにより、組織のデータを安全に保つことが可能です。
さらに、Teams管理センターを通じて、通話や会議、チャットに対するゲストのアクセス権限を細かく設定できます。
◇ファイルごとのアクセス制限設定
Teams上のファイルは、所有者や管理者が、特定のユーザーごとにアクセス権を設定できます。さらに、「閲覧のみ」や「編集可能」など、権限の細かい設定も可能です。
◇チャット履歴の保持期限設定
Teamsには、チャットやチャネルメッセージのデータを一定期間保持し、その後自動で削除できる「アイテム保持ポリシー」があります。例えば、「30日間だけ保存して、そのあとに削除する」といった、具体的な条件の指定も可能です。
この機能を活用することで、不要なデータの蓄積を防ぎながら、法的要件やコンプライアンス対応に必要な情報を適切に管理できます。
◇多要素認証(MFA)
Microsoft 365では、多要素認証(MFA)を設定することで、Teamsを含む各種サービスのセキュリティ強化が可能です。
MFAを有効にすると、パスワードに加えて、SMSで届くワンタイムパスワード(OTP)やプッシュ通知、Microsoft Authenticatorなどによる追加の本人確認が必要になります。
そのため、万が一パスワードが漏れても、不正アクセスを防止しやすくなります。
◇情報漏えい防止(DLP)機能
Teamsは、Microsoft Purviewのデータ損失防止(DLP)機能と連携することで、チャットやチャネル内の機密情報を自動で検出し、保護できます。
あらかじめ設定した条件に一致する内容を検知すると、メッセージの削除やユーザーへの警告などの対処が実行されます。
◇監査ログと活動モニタリング
Teamsの監査ログは、チーム内の操作履歴を記録し、必要に応じて検索できます。チームやチャネルの設定変更、ユーザーのログイン、ファイルの閲覧・編集といった幅広いアクションを追跡可能です。
こうしたログは、セキュリティ上の脅威を早期に発見したり、インシデントの原因を特定したりするのに有効です。コンプライアンス対応の証明にも役立ち、結果として組織全体のセキュリティ強化につながります。
■Microsoft Teamsのプランの違い
Teamsには、組織の規模や利用目的に応じて選べる複数のプランがあります。ここでは、無料版と有料版の違いに加え、Microsoft 365の法人向けプランと個人向けプランについても解説します。
◇無料版と有料版のおもな違い
無料版(Teams Free)と有料版(Teams Essentials)のおもな違いを、以下にまとめました。
プラン | 無料版(Teams Free) | 有料版(Teams Essentials) |
---|---|---|
会議時間 | 最長60分 | 最長30時間 |
参加人数 | 最大100人 | 最大300人 |
ストレージ容量 | チーム全体で5GB | 1ユーザーあたり10GB |
会議録画 | × | ○ |
サポート | × | 24時間365日サポート |
料金(税抜き) | 無料 | 7,188円/年 |
無料版Teamsでは、有料版のようなサポートはありませんが、Microsoft公式のサポートコミュニティで質問することはできます。
◇Microsoft 365に含まれるTeamsの違い
法人向けのMicrosoft 365には、有料版のTeamsの全機能を利用できる3つのプランがあります。利用できる機能は、「Business Basic」「Business Standard」「Business Premium」の順で、段階的に増えていきます。
プラン | Business Basic | Business Standard | Business Premium |
---|---|---|---|
料金(税抜き) | 1万788円/年 | 2万2,488円/年 | 3万9,576円/年 |
Officeアプリ |
Web版・モバイル版のみ利用可 | デスクトップ版も利用可 | デスクトップ版も利用可 |
ストレージ容量 |
1ユーザーあたり1TB | 1ユーザーあたり1TB | 1ユーザーあたり1TB |
セキュリティ機能 | 基本的なセキュリティ | 基本的なセキュリティ | 高度なセキュリティ |
Teamsの特徴は、Microsoft 365ツールと連携できる点にあります。具体的には、チャット上に投稿されたWordファイルをTeams上でほかのメンバーと編集するなどです。
Business BasicでもTeamsの機能は利用できますが、Officeのデスクトップアプリは利用できません。Web版では使用できるOffice機能が制限されているため、Teamsを使って業務の効率化を図りたいならBusiness Standard以降のプランの利用をおすすめします。
また、Business Standard以降のプランではTeamsでウェビナーを開催できる点も違いとして挙げられます。
◇法人向けと個人向けプランの比較
個人向けのMicrosoft 365には、「Microsoft 365 Personal」と「Microsoft 365 Family」の2つのプランがあります。どちらのプランでも、無料版Teamsの全機能が利用可能です。
チャットやビデオ通話などの基本機能は使えますが、チーム単位での情報共有やタスク管理といった組織向けの機能には一部制限があります。
プラン | Personal | Family |
---|---|---|
月額料金 (税抜き) |
2万1,300円/年 | 2万7,400円/年 |
利用可能Officeアプリ | Word、Excel、PowerPoint、Outlook、OneNoteデスクトップアプリ | Word、Excel、PowerPoint、Outlook、OneNoteデスクトップアプリを使用可能 |
ユーザー数 | 1人 | 1人~6人 |
ストレージ容量 | 1TB |
最大6TB (1ユーザーあたり1TB) |
参考)Microsoft公式 Microsoft365 Personal / Microsoft365 Family
■Microsoft Teamsへの移行方法
SkypeからTeamsへの移行は、簡単に行なうことができます。ここでは、移行方法と基本的な使い方、移行期間中のSkypeとTeamsの併用について解説します。
◇Teamsアプリ、Teams on the Webの選択
Teamsは、アプリ版とWeb版(Teams on the Web)の2種類の使い方があります。Skypeから移行する際は、組織の利用目的に合わせてどちらかを選びましょう。
アプリ版は、すべての機能が利用できるうえ、デバイスにインストールすることで動作が安定しやすい特徴があります。頻繁にTeamsを使用する予定がある場合や、長時間のビデオ会議を行なう場合には、アプリ版がおすすめです。
一方、Web版はインストール不要で、ブラウザ上ですぐに利用できます。ただし、背景のぼかしや文字起こしなど、一部の機能が制限される点に注意が必要です。
◇Teamsの基本的な使い方
Teamsを起動すると、左側に「チャット」「ミーティング」「チーム」「カレンダー」など、主要なコマンドボタンが表示されます。これらのボタンから、通話やチャット機能をSkypeと同じように利用可能です。
なお、トップページに表示されるコマンドボタンは、個人向けと法人向けで異なります。
◇移行期間中のSkypeのデータについて
現在、2025年5月5日までの移行期間は終了しています。チャットや連絡先、通話履歴などのSkype内のデータは、2026 年 1 月に削除されるため、それまでにTeamsへ移行するか、必要なデータをエクスポートしておきましょう。
■Microsoft Teamsを利用する際の注意点
Teamsは便利なツールですが、コラボレーションツール全般に共通するように、セキュリティ対策を怠ると、情報漏えいや不正アクセスのリスクが高まります。ここでは、Teamsを安全に利用するための主要な注意点や対策を紹介します。
◇チームの作成権限の適切な設定
Microsoft 365では、初期設定のままだと、すべてのユーザーがTeams上で自由にチームを作成できるようになっています。この状態のままでは社内で不要なチームが乱立し、情報が分散して管理が複雑になる恐れがあります。
チームが適切に管理されていないと、重要な情報の所在が不明確になり、セキュリティリスクの増加にもつながるでしょう。このような問題を防ぐためには、チーム作成の権限を特定のメンバーに限定することが効果的です。
◇情報漏えい対策・管理
Teamsでの情報漏えいを防ぐには、チームやチャネルのプライバシー設定を適切に行なうことが大切です。チャットを作成する際は、「プライベート(非公開)」に設定し、必要なメンバーのみがアクセスできるようにしましょう。
また、メンバーのアクセス権限を定期的に見直し、退職者や異動者など、不要なメンバーは速やかに削除することも重要です。そのほか、ゲストのアクセス制限、ファイルごとの閲覧・編集制限、チャット履歴の保存期限設定なども細かく管理しましょう。
◇不正アクセス対策の強化方法
Teamsも、これまでのSkypeと同様に、インターネット環境があればどこからでもアクセスできる上、現代の組織のコミュニケーションツールとして利用頻度の高いツールのため、悪意のあるユーザーに狙われやすいといえます。
不正アクセスのリスクに対応するためには、多要素認証(MFA)の導入や生体認証などの組み合わせが効果的です。MFAを有効化することで、認証にはパスワード以外の要素も必要になり、第三者による不正アクセスを防ぎやすくなります。
そのほかにも、アクセスできるデバイスを制限したり、不要なゲストのアクセスをブロックしたりすることで、セキュリティをより強化できます。
■まとめ
Skypeに代替するTeamsには、高度なセキュリティ機能が備わっているため、企業も安心して導入しやすいでしょう。
ただし、設定漏れなどが原因でセキュリティリスクが高まる可能性も考えられるため、運用時には設定内容の管理と、必要に応じた見直しが重要です。
Teamsは無料版・有料版、個人向け・法人向けと幅広いプランが用意されています。Skypeがサービス終了となるこの機会に、Teamsの導入を検討してみてはいかがでしょうか。
この記事を書いた人
GMOグローバルサイン株式会社
トラスト・ログイン事業部
プロダクトオーナー
森 智史
国内シェアNo.1のSSL認証局GMOグローバルサインで10年間サポート部門に従事。抜群の知識量と分かり易い説明で多くのお客さまからご支持いただく。
現在は自社IDaaSのプロダクトオーナーとしてお客さまの意見を伺いながら使いやすくセキュリティの高いサービスを開発者たちと共に作成中。