パスワードレス認証とは?安全性や導入のメリット、実現方法を詳しく解説
さまざまなシステムやサービスを利用する際、パスワードを利用する機会は多いでしょう。そんななか近年注目されているのが、パスワードを使わない「パスワードレス認証」です。従来のパスワード認証よりも安全といわれるパスワードレス認証とは、どのようなものなのでしょうか。
この記事では、パスワードレス認証の概要から実現するための方法、メリットや注意点までを解説します。
■パスワードレス認証とは?
パスワードレス認証の概要と併せて、安全性の高さについて解説します。
◇パスワードレス認証について
パスワードレス認証とは、パスワードを使わずに本人を確認する認証方式です。一般的な認証ではIDとパスワードを記憶しておき、ログインの際に入力する必要があります。これに対して、パスワードレス認証ではパスワードを記憶する必要がなく、専用の認証デバイスを使うことで本人確認を行ないます。
指紋認証や顔認証などもパスワードレス認証の一種であり、スマートフォンのロック解除方式として利用されている方も多いのではないでしょうか。このように、パスワードレス認証は徐々に私たちの生活のなかに取り込まれつつあります。
2022年5月にはApple/Google/Microsoftの3社がパスワードレス認証のサポートを拡大することを発表しました。そのため、今後パスワードレス認証はより広く普及すると予想されます
◇パスワードレス認証の安全性
パスワードレス認証を導入することで、パスワードが持つセキュリティリスクを回避できます。近年では、一人で複数のクラウドサービス、システムを利用することが多く、アカウントを複数持っていることが一般的です。
その際に、パスワードは管理が煩雑になりやすく、「多すぎて覚えきれない」「簡易なパスワードを設定してしまう」「使い回す」といったことが起こりやすくなります。そのため、適切に管理できていないパスワードはセキュリティ強度が高くありません。
これに対して、パスワードレス認証は管理する必要がないことから前述のリスクを回避でき、かつ高度な技術を利用しているためパスワードに比べて安全性が高いシステムです。
■パスワードレス認証を実現する方法・種類
認証において重要な3つの情報要素として「知識情報・所有情報・生体情報」があります。パスワードはこの3要素でいうところの「知識情報」に該当しますが、パスワードレス認証ではおもに「所有情報」「生体情報」を活用します。
これらの情報を認証手段として扱う方法や、認証の種類について見ていきましょう。
◇FIDO認証
FIDO(Fast Identity Online)認証は、パスワードレスの標準化を進める国際規格です。グローバルで標準化が進められており、さまざまなユーザーデバイスで利用可能な認証方法のため、今後のパスワードレス認証における標準になる可能性が高いといえます。
FIDOの大きな特徴が、サーバー・ユーザーで秘密の情報を共有しない仕組みであることです。公開鍵暗号方式を利用し、生体認証などと組み合わせることでパスワードレス認証を実現します。
◇生体認証
生体認証は、指紋・虹彩・静脈などの生体情報を、パスワードの代わりに用いる認証方式です。生体情報は第三者が複製することが難しく、強固な認証方式として金融機関でも採用されています。生体認証を利用する際は、指紋などを読み取るための専用の機器が必要です。
◇デバイス認証
デバイス認証は、スマートフォンやタブレットなどの本人しか所持していないものを認証に用います。所有情報に該当する認証方式であり、認証アプリで生成されるコードやワンタイムパスワード、プッシュ通知などによって認証します。
認証アプリとしては、「Google Authenticator(Google認証システム)」が有名です。スマートフォンなどはほとんどの人が所有していることもあり、二段階認証を実現するための手段としても普及しています。
◇マジックリンク
マジックリンクは、ユーザーが入力したメールアドレス宛に認証用のリンク付きメールを送り、リンクをクリックすることでアクセス権を付与する認証方式です。認証の際、ユーザーが入力する必要がある情報はメールアドレスのみで、パスワードは入力する必要がありません。
メールアドレスも本人しか所有していないものであり、所有情報を用いた認証方式です。ただし、生体認証やデバイス認証と比べると第三者に利用される可能性が高いといえるでしょう。
◇シングルサインオン(SSO)
シングルサインオン(SSO)は、一度のログインで登録済みの複数サービスにログインできる仕組みです。各種クラウドサービスなどを一元的に管理することで、ログインの手間を大幅に減らせます。
SSO自体はパスワードレス認証を実現するためのものではありませんが、最初のログイン以後はパスワードレスで複数のサービス・システムにアクセスできるため、パスワードレスを実現する一つの手段といえます。
近年では、SSOサービスへのログインをパスワードレスで実現できるサービスもあり、完全なパスワードレスを実現することも可能です。
■パスワードレス認証のメリット
パスワードレス認証のメリットには、さまざまなものが挙げられます。そのなかでも、代表的な3つのメリットについて見ていきましょう。
◇セキュリティの向上
パスワードレス認証を用いる最大のメリットは、セキュリティの向上です。近年、パスワードを狙ったサイバー攻撃が増えており、リスト化されて売買されていることもあります。
サイバー攻撃用のツールなどを用いれば、リスト化されたパスワードを繰り返し試行することは難しくありません。安全に配慮したパスワードを設定していたとしても、突破されてしまう可能性があります。
そのため、パスワードを利用しないパスワードレス認証を用いることで、このようなサイバー攻撃のリスクを回避できます。生体情報や所有情報は複製や偽造が難しく、これらを組み合わせて多要素認証を実現することも可能です。
◇煩雑なパスワード管理からの解放
近年業務のIT化が進み、クラウドサービスの業務利用が増えたことで管理すべきパスワードの数は膨大になっています。一人で10個以上のパスワードを管理することも珍しくなく、管理が煩雑になりパスワードを使い回してしまう、などが企業にとって大きな課題です。
実際、パスワードのセキュリティ強度が落ちてしまい、セキュリティリスクを抱えてしまっているケースも少なくありません。パスワードレス認証を用いれば、生体情報や所有情報を活用するため、煩雑なパスワード管理から解放されてセキュリティの向上にもつながります。
◇業務の効率化、生産性の向上
前述のとおり、業務で利用するシステム・サービスが増えていることで、ログインを行なう回数も増えています。一つひとつは大した手間ではないかもしれませんが、都度ログインが必要になると積もり積もって、業務効率の低下を招くでしょう。
パスワードレス認証はパスワードの入力の手間がなくなるため、必要なときに必要なシステム・サービスへ即座にログインすることが可能です。生体情報・所有情報を用いた認証は、多くの場合パスワードの入力よりも手間がかかりません。
パスワードレス認証でスムーズにログインできるようになれば、業務の効率化と生産性の向上が期待できるのです。
■パスワードレス認証を利用する際の注意点
便利でセキュリティの向上も期待できるパスワードレス認証ですが、利用する際にはいくつか注意すべき点もあります。ここでは、パスワードレス認証を利用する際に気を付けるべきポイントについて解説します。
◇認証デバイスの不具合や紛失でログインできなくなる
パスワードレス認証ではパスワードの代わりに生体情報・所有情報を用いるため、専用の認証デバイスが必要になります。例えば、指紋・顔を読み取るためのスマートフォンやカメラデバイス、ワンタイムパスワードやトークンを利用・表示するためのキーデバイスなどです。
これらの認証デバイスの不具合や紛失によって認証ができなくなり、ログイン不能となる可能性があります。
◇かえって煩わしく感じるユーザーも存在する
一般的にパスワードレス認証は、パスワードを入力するよりも素早く簡単に認証を行なえます。しかし、特に生体情報を用いる認証では、体調や格好によって認証が失敗することがあります。
指紋認証では手荒れ、顔認証ではマスクや帽子・メガネなどが認証の妨げになることが考えられるでしょう。そうした認証の失敗や、認証の際に複数のデバイスが必要になる点などが煩わしいと感じられるユーザーも、なかにはいるかもしれません。
パスワードレス認証を導入する際には、パスワードレスに対するユーザーの理解を深めるための教育や、利用上の不具合が発生しづらいデバイス・ソリューションの採用を検討することが重要です。
■パスワードレス認証を実装するなら“トラスト・ログイン”
業務で多くのクラウドサービスを利用する機会が増えた昨今、パスワードレス認証を導入する際にはシングルサインオンがおすすめです。シングルサインオンを導入する際には、簡単最速のシングルサインオンサービスである「トラスト・ログイン」の採用を検討してみてはいかがでしょうか。
トラスト・ログインは、増え続ける認証情報をクラウドで一元管理し、セキュアなシングルサインオン環境を構築できます。ユーザーは利用するサービスで都度パスワードを入力する必要がなく、シームレスなログインが可能です。
また、トラスト・ログインへのアクセスの際にも「パスワードレス プッシュ通知」によって、完全なパスワードレス認証を実現できます。「パスワードレス プッシュ通知」は、スマートフォンやウェアラブルデバイスに届いたプッシュ通知から、顔認証や指紋認証による本人確認が行なえる機能です。
トラスト・ログインの運営元はSSL認証局として20年以上の実績があり、過去12ヵ月の稼働率も99.99%と安定しており、安全性・安定性ともに高いサービスです。基本料金0円で始められるサービスなので、まずは一度試してみてはいかがでしょうか。
■まとめ
パスワードを使わずに本人確認をするパスワードレス認証を導入することで、利便性の向上だけではなくセキュリティ面の強化も期待できます。パスワードレス認証を実現する方法や種類はさまざまですが、「生体情報」「所有情報」を活用するものがほとんどです。
業務で利用するシステムやクラウドサービスが増え続ける昨今、パスワードに頼った認証方式はリスクが高まってきています。安全性と利便性の向上のためにも、パスワードレス認証の導入を検討してみてください。
この記事を書いた人
GMOグローバルサイン株式会社
トラスト・ログイン事業部
プロダクトオーナー
森 智史
国内シェアNo.1のSSL認証局GMOグローバルサインで10年間サポート部門に従事。抜群の知識量と分かり易い説明で多くのお客さまからご支持いただく。
現在は自社IDaaSのプロダクトオーナーとしてお客さまの意見を伺いながら使いやすくセキュリティの高いサービスを開発者たちと共に作成中。