SaaS管理ツールとは?導入する3つのメリット・選び方のポイント、おすすめツールについて詳しく解説
最近では業務でもクラウド経由でアプリケーションを利用する機会が増えています。SaaSと呼ばれる利用形態であり、テレワークの普及も後押しして、多くの企業が導入しています。しかし、SaaSの利用機会が増えたことで新たに課題も発生し、SaaS管理ツールの導入を考える企業も多いのではないでしょうか。しかし、SaaS管理ツールにはメリットだけでなく、導入する際の課題も存在します。
そこでこの記事では、SaaS管理ツールの概要から利用するメリット、導入時の課題、選ぶ際のポイントについて解説します。また、利用タイプ別におもなSaaS管理ツールを紹介しますので参考にしてください。
【目次】
1.SaaS管理ツールとは?
ⅬそもそもSaaSとは?
ⅬSaaS管理ツールとは
ⅬなぜSaaS管理ツールが必要なのか
2.SaaS管理ツールを導入する3つのメリット
Ⅼアカウント管理を効率化できる
ⅬSaaS管理コストの適正化を図れる
Ⅼセキュリティリスクを低減できる
3.SaaS管理ツールを導入する際の課題
Ⅼ導入コストが必要になる
Ⅼ初期登録が必要になる
Ⅼ自社に適したツールを選ぶのが難しい
4.SaaS管理ツールを選ぶ際のポイント
Ⅼ管理できるSaaS数はどのくらいか
Ⅼツール導入の目的にマッチした機能があるか
Ⅼ自社のセキュリティ要件を満たしているか
5.おもなSaaS管理ツールの比較
Ⅼ利用状況の把握を強みとするタイプ
Ⅼセキュリティ対策を強みとするタイプ
Ⅼ日本企業向けに開発されたタイプ
6.SaaS管理ツールと連携可能な“GMOトラスト・ログイン”
7.まとめ
■SaaS管理ツールとは?
はじめに、SaaS管理ツールの概要と併せて、それが必要とされている理由について見ていきます。
◇そもそもSaaSとは?
そもそもSaaS(Software as a Service)とは、サーバーで稼働するソフトウェア(アプリケーション)を、インターネットなどのネットワーク経由で利用するサービス・利用形態です。クラウドサービスの一つとして利用している企業もかなり増えました。
SaaSは、自社で独自にソフトウェアを開発する必要がなく、短期間に導入できる点がメリットです。毎月定額の利用料を支払うサブスクリプション方式で利用するため、開発にともなうコストも削減できます。
また、インターネット経由で利用できるため、同一アカウントであれば、テレワークなどのさまざまな環境でも同じサービスを利用可能です。上手に運用できれば、便利で業務の効率化も図れることから、近年では多くの企業が導入しています。
◇SaaS管理ツールとは
SaaS管理ツールは複数のSaaSを一元的に管理するためのツール・サービスです。SaaSを利用する際には、サービスごとにアカウントを作成して個別に管理する必要がありますが、SaaS管理ツールを使えばそれぞれのアカウント情報も一元的に管理できます。
また、各SaaSの利用状況を把握することでコストの可視化なども実現でき、近年増え続ける業務でのSaaS利用をより効率的に行なうために必要不可欠なものとなっています。
◇なぜSaaS管理ツールが必要なのか
前述のとおり、昨今の業務では複数のSaaSを利用することは珍しくありません。企業におけるSaaS活用が活性化している今、問題となる点はSaaSの利用増加にともないアカウントの管理が煩雑になりやすい点や、適切に管理しきれないという点が挙げられます。
例えば、新入社員が10名入社した際、1人あたり10個のSaaSを利用している場合には合計100アカウント分の対応が必要です。その他にも、退職などによる削除や人事異動などによるアカウント権限の変更などを考慮すると、アカウント管理が非常に煩雑になります。
また、情報部門が許可していないにも関わらずユーザーや他部門が独自に導入したSaaSの利用(シャドーIT)といった問題があります。その他、退職者が残ったままのアカウントでアクセスする、不明なアカウントが放置されている、といった、シャドーアカウントの存在も問題です。
これらの問題は、SaaS管理ツールとシングルサインオン(SSO)を組み合わせて一元管理することで大きく改善されます。
SaaSは便利であり、変化する働き方に柔軟に対応するためには欠かせない存在です。今後も利用は拡大することが見込まれるため、SaaS管理ツールによって利用するサービスやユーザーのアカウントを一元的に管理する必要性が高まっています。
■SaaS管理ツールを導入する3つのメリット
SaaS管理ツールを導入することによる3つのメリットについて解説します。
◇アカウント管理を効率化できる
SaaS管理ツールを利用する最大のメリットは、複数のSaaSとそれぞれのアカウントを可視化して一元管理できる点にあります。一元管理することで煩雑になりやすいアカウント管理業務の効率化が期待できます。
例えば、社員の入社・退職・異動にともなうアカウントの作成・削除・権限変更といった対応なども、一元的に管理していれば対応漏れを防止でき、シャドーアカウントの対策も可能です。
◇SaaS管理コストの適正化を図れる
一元的にアカウントを管理できれば、不要なアカウントもひと目で確認できるようになります。SaaSはアカウント単位で課金されるものも多いため、不要なアカウントはすぐに削除して、コストの削減を図ることが重要です。
SaaSごとの利用状況も確認できるため、使用頻度の低いSaaSは解約するなどの対策をすることで、SaaSの管理コストの適正化が図れます。
◇セキュリティリスクを低減できる
SaaSごとの利用状況を確認できるようになれば、不正アクセスなどによるサービスの不正利用も把握できるようになります。SaaS管理ツールで直接防げるわけではありませんが、誰がどの権限でサービスを利用しているかといった利用状況を把握することで不正アクセスのリスクを大きく減らすことも可能です。
また、SaaSを利用するうえでのセキュリティリスクは、SaaSの利用状況が把握できていないことから発生します。そのため、SaaS管理ツールを利用すれば社内でのSaaS利用アカウントやサービス利用状況の見える化につながり、セキュリティリスクが低減できます。
■SaaS管理ツールを導入する際の課題
SaaS管理ツールには多くのメリットがあるものの、導入にあたっては課題もあります。ここでは、よくある課題を3点解説します。
◇導入コストが必要になる
SaaS管理ツールの導入時には初期コストが発生します。さらに、導入後も月額費用やメンテナンスなどのランニングコストがかかります。そのため、利用しているSaaSが少ないケースなどでは、コストが増える割に効果が感じられないこともあるでしょう。
しかし、利用しているSaaSの数やアカウント数が多い場合は、導入によってアカウントの発行や削除、棚卸しなどにかかる手間が省けるため、作業の効率化と高い費用対効果が見込まれます。
このように企業の置かれた状況によって費用対効果は異なるため、SaaS管理ツールを導入する前に、自社で導入した場合の費用対効果を十分に検討しておくことが必要です。
◇初期登録が必要になる
SaaS管理ツールを導入する際には、現在利用しているSaaSアカウントを登録しなければなりません。また、現在の管理手法からデータを移行する必要もあるでしょう。利用しているSaaSの数が多い場合は、こうした初期登録やデータ移行にかかる手間がネックになる可能性があります。
しかし、初期登録を一度済ませてしまえば、そのあとの管理はぐっと楽になります。データ移行については、SaaSアカウントの情報を自動取得してくれるツールなどもあるため、初期登録が大変な場合は自動取得が可能なツールを選ぶとよいでしょう。
◇自社に適したツールを選ぶのが難しい
SaaS管理ツールはさまざまな種類があり、それぞれで機能や操作性などが違います。そのため、自社に必要な機能の見極めができていないと、ツールを導入しても十分に使いこなせない可能性が高いでしょう。
しかし、多くの種類のSaaS管理ツールがあるからこそ、自社により適したツールが選べるともいえます。自分たちだけでツールを選択するのが難しい場合は、ツールに詳しい第三者などにアドバイスを求めましょう。
■SaaS管理ツールを選ぶ際のポイント
SaaSにさまざまなサービスが存在するように、SaaS管理ツールにもさまざまなものが存在します。そのなかから、自社に最適なツールを選択するためには、次に3つの注目ポイントを挙げます。
◇管理できるSaaS数はどのくらいか
SaaS管理ツールは、サービスやプランごとに管理できるSaaSの数が異なります。一元的に管理するために導入するものであるため、自社で利用するSaaSに対応していないものを選ばないように注意してください。
現在利用しているSaaSの数と併せて、今後導入する可能性も考慮して管理する必要のあるSaaSの種類を検討し、対応可能なSaaS管理ツールを選択します。
◇ツール導入の目的にマッチした機能があるか
SaaS管理ツールと一言でいっても、備えている機能・特性はさまざまです。例えば、管理対象のSaaSに対応しているか、人事システムなどのサービスとの連携が可能かなど、導入する目的にマッチした機能があるか、しっかりと確認することが大事です。
ツールを導入する前に現在の課題を洗い出し、導入する目的を明確にすることが重要です。課題を解決し、目的を達成するための機能を持ったツールを選んでください。
◇自社のセキュリティ要件を満たしているか
複数のSaaSを一元的に管理することから、SaaS管理ツール自体のセキュリティ対策もしっかりと確認する必要があります。代表的なセキュリティ対策機能の例としては、二要素認証やIPアドレス制限、セキュリティルール設定などが挙げられます。
SaaS管理ツールが不正アクセスなどの被害に遭うと、影響範囲が非常に広くなるため、自社で定めているセキュリティ要件をクリアできるサービスを選択することが重要です。加えて、有事の際のサポートが充実しているかどうかも判断基準の一つとします。
■おもなSaaS管理ツールの比較
SaaS管理ツールは、製品によってそれぞれ特徴や機能が異なります。そのため、機能の多さだけでなく、目的に合ったサービスかどうかを事前に確認することが大切です。ここでは、目的のタイプ別におもなSaaS管理ツールを紹介します。
◇利用状況の把握を強みとするタイプ
まず、利用状況の把握を強みとするタイプのツールを紹介します。このタイプは効率良くアカウントを管理することに重点を置いて開発されています。導入によって業務の効率化やコスト削減、セキュリティ強化が図れるでしょう。
・マネーフォワードAdmina
マネーフォワードAdminaは、SaaSごとに誰にいくつのライセンスがあるのか、誰がどのアカウントをもっているのかなどを可視化して、アカウントを一元的に自動管理できるツールです。
最新の従業員データベースと照合して退職者のIDを自動検出し、アラートを表示することも可能です。アカウント削除はワンクリックで完了するため、入退社時のID発行や削除の管理を容易に行なえます。また、シャドーITの検知も簡単にできるので、セキュリティも向上するでしょう。
マネーフォワードAdminaは240以上のSaaSに対応しており(2023年10月現在)、幅広い業界の企業に利用されています。
・デクセコ
デクセコはSaaSの契約情報やアカウント情報などの利用状況を、効率的に管理できるツールです。シンプルでわかりやすいユーザーインターフェースなので、初めて使う方でも安心して操作できるでしょう。
アンケート機能が搭載されており、定期的に従業員にアンケートを送信し、新しく利用し始めたSaaSや使わなくなったSaaSを回答してもらうことで、常に最新の契約情報を把握できます。
また、SaaSだけでなく、パソコンやスマートフォンなどのIT資産もまとめて一元管理することが可能です。
・ジョーシス
ジョーシスはITデバイスとSaaSの統合管理ツールです。パソコンやスマートフォンなどのITデバイスとSaaSを利用者ごとに紐付けて可視化することで、常に最新の状態での管理が可能です。
入退社時のアカウント発行や削除がワンクリックで行なえるほか、アラート機能も搭載されているため、退職者アカウントの削除漏れも防げます。
また、ジョーシスではオンラインストアからITデバイスの購入やリースも行なえます。各種設定や配送、回収、廃棄まで一貫してアウトソーシングできるだけでなく、台帳更新も自動で行なわれるため、ITデバイスの管理を効率化できるでしょう。
・Bundle
Bundleはアカウント管理の自動化機能が強みのツールです。入社時のアカウント登録と同時に、指定するSaaSアカウントを自動発行する機能があります。さらに、アカウント情報と従業員データベースを自動で名寄せし、名寄せできなかったアカウントを自動削除できる「アカウント棚卸し機能」も搭載されています。
また、職務や部署ごとにグループを作成し、グループ内で利用できるSaaSを指定することも可能です。人事系SaaSと連携させれば、SaaSの割当変更も自動で行なえるため、人事異動に関する業務を効率化できるでしょう。
◇セキュリティ対策を強みとするタイプ
セキュリティ対策を強みとするタイプのツールは、アカウント管理の効率化に加えて、シングルサインオンや多要素認証などを実現できます。利便性を維持しながらセキュリティレベルを高めたい企業におすすめです。
・LOCKED
LOCKEDはアカウント管理とパスワード管理の2つのシステムから成り立つツールで、アカウント管理の自動化とシングルサインオンを実現できます。さらに、SMSや秘密の質問などによる二段階認証や、スマートフォンから利用するとき用の生体認証にも対応しているため、より安全なSaaSの運用が可能となるでしょう。
また、「社外のみ二段階認証が必要」など、運用スタイルに合わせた柔軟なアクセス制御ができるため、業務を妨げることなくセキュリティを向上できます。位置情報やIPアドレスなどを詳細にログで記録する機能もあるため、トラブルが発生した際でも安心です。
◇日本企業向けに開発されたタイプ
日本企業向けに開発されたタイプは、外資系のツールなどでは対応できない日本企業特有のニーズにも柔軟に対応できます。
・Keyspider
Keyspiderは、日本国内の企業向けに開発・提供されているツールです。例えば、API連携のできないSaaSや、同期を前提としていないオンプレミス型の社内システムとも連携が可能なので、既存システムをそのまま利用できます。
また、部署や役職区分など階層型組織を読み解き、連携先に必要な組織情報を同期することも可能です。さらに、人事異動情報を事前に登録することで発令日に自動で同期する機能を活用すれば、異動後も一定期間は以前の権限を保持させるなど柔軟に運用できます。
■SaaS管理ツールと連携可能な“GMOトラスト・ログイン”
SaaS管理ツールの必要性についての話でも触れましたが、昨今の業務におけるクラウド利用において注意すべき点は、“シャドーIT”と“シャドーアカウント”の存在です。これらの問題を解決するためには、シングルサインオン(SSO)を導入しつつSaaSごとにアカウントを棚卸しすることが有効です。そこでおすすめのサービスが“GMOトラスト・ログイン”です。
トラスト・ログインは、業務で利用する社内システムやSaaSのアカウントなどをクラウド経由で一元管理し、ID認証・パスワード管理・アクセス制御などの機能を提供するIDaaSとなります。
IDaaSについて詳しくは下記ページを参考にしてください。
IDaaS(Identity as a Service/アイダース)とは?5つのおもな機能や導入メリット、おすすめサービスを紹介
トラスト・ログインは、複数のSaaSを一元的に管理してSSOを実現するサービスであり、2022年7月度には“満足度の高いSSOツール”として1位に選ばれました。
稼働率も過去12ヵ月で99.99%と安定しています。また、セキュリティ面でも内部統制の国際規格ISO/IEC27001を取得し、トラスト・ログインを提供するGMOグローバルサインは、SSL電子証明書の認証局として20年以上の実績があるため、安心してご利用いただけます。
また、トラスト・ログインでは、7,000以上のサービスログインフォームやSAML2.0対応のSaaSと連携可能です。今回紹介したSaaS管理ツールの多くについても連携が可能であるため、すぐにトラスト・ログインを導入できます。
特に、“SaaSアカウント連携 by Bundle”を使ってBundleと連携することにより、SaaS側のアカウントの自動的な発行・削除が可能になります。
SaaSの業務利用が増えるなか、IDaaSの重要性も増しています。IDaaSはアカウントやアクセス管理の効率化だけでなく、利便性およびセキュリティの向上も期待できる手段です。
■まとめ
SaaS(Software as a Service)とは、サーバーで稼働するソフトウェアをネットワーク経由で利用するサービスのことです。今後もSaaSの利用は増え続けることが予想されますが、サービスが増えればアカウント管理などが煩雑になるため、複数のSaaSを一元的に管理するツールの必要性はますます高まるでしょう。
SaaS管理ツールを利用すれば、アカウント管理の効率化だけでなく、コストの適正化やセキュリティリスクの低減効果も期待できます。一方で、導入コストや初期登録が必要な点など導入する際の課題もあります。
SaaS管理ツールを選ぶ際には、管理できるSaaSの数や導入の目的にマッチしているか、セキュリティ要件を満たしているかなどを基準に選ぶとよいでしょう。
この記事では、利用タイプ別におすすめのSaaS管理ツールも紹介しました。この機会に、SaaS管理ツールの導入を検討してみてはいかがでしょうか。
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この記事を書いた人
GMOグローバルサイン株式会社
トラスト・ログイン事業部
プロダクトオーナー
森 智史
国内シェアNo.1のSSL認証局GMOグローバルサインで10年間サポート部門に従事。抜群の知識量と分かり易い説明で多くのお客さまからご支持いただく。
現在は自社IDaaSのプロダクトオーナーとしてお客さまの意見を伺いながら使いやすくセキュリティの高いサービスを開発者たちと共に作成中。